塾講師やりたいんだけど、大変なのかな…?
今働いている塾は辛すぎるから転職しようかな?でもどこも同じかな…
この記事ではこのような疑問や不安を解消します。
書くのは数年の正社員講師を経て個別指導塾の教室長となり、15年以上にわたり教室を運営している現役塾長です。
この記事を読むと次のことが理解できます。
塾講師正社員は本当に辛いのか
辛いかどうかを判断する材料の一つに「離職率」があります。
厚生労働省発表のデータによれば、
2019年の産業別離職率ランキングは下記のとおりです。
1 宿泊業・飲食サービス業 33.6%
2 生活関連サービス・娯楽業 20.5%
3 教育・学習支援業 17.7%
4 電気・ガス・水道業 15.4%
4 卸売業・小売業 15.4%
5 医療・福祉 14.4%
(6位以下省略)
教育・学習支援業は第3位ですね。
辞める人の割合は比較的高い方であると言えます。
しかし離職率だけでは「塾講師=ツライ」とまでは言い切れませんね。
実際、現役塾長である私は20年近く塾業界にいますし、周りにも10年以上続けている講師や教室長も多いです。
一方で1~2年で辞めていく社員講師がいるのも事実です。
彼らからすれば塾講師は辛いのです。
しかし、飲食の仕事や介護の仕事においても
「辛いから短期間で辞める」
というケースは見られますよね。
どんな仕事であっても辛いと感じる人がいるわけですので、
塾講師だから辛いというわけではありません。
じゃあなんで塾講師はツライって言われちゃうんだろう?
その原因はミスマッチが起こりやすいという点にあります。
塾講師社員になったものの、「思ってたのと違う!」と感じることが多いのです。
思ったより営業が多い
これは塾講師のミスマッチとしては一番多く発生するのではないかと思います。
具体的な営業の内容は後述しますが、仮に他の業種で営業職を希望して入社したとすると当たり前にやることが多いんです。
しかし塾講師=営業職だと思っていない人が多いんです。
これは採用する側が面接できちんと説明すべきなんですが、そうしない塾が結構あります。
(授業だけすればいいよっていう塾も中にはありますが。)
その結果、
ボク営業職に就いたつもりはないのに…
と感じて辛い思いをする人が出てきます。
生徒とのコミュニケーションがうまくいかない
経験の浅い講師の場合、生徒の不評を買ってしまうことが結構あります。
なんでわからないの?
こんな何気ない一言で生徒を傷つけて嫌われてしまったり。
無口な生徒との距離感も最初は分からないものです。
こうして、一生懸命授業準備して臨んだのに、生徒の反応がイマイチでヘコんでしまい、
オレ向いてないや…
と感じてしまうことがあります。
1年目から「1人前の塾講師」でなければならない
学校に教育実習に来ている先生が分かりにくかった経験はないでしょうか?
学校だとそれが許されるんですが、塾では許されません。
カンタンに退塾されちゃいます。
「新人講師だから」って言い訳できないんです。
だから1年目からしっかりと研修したり、教材研究や授業準備したりして、一定のレベルの授業ができるようにするのです。
もしかしたら1年目が一番大変かもしれません。
だから「思ってたより全然大変!」と感じてしまうのでしょう。
努力しても成果を感じにくい
経験が浅いうちは、めちゃくちゃ頑張って準備しても
あの先生よくわかんない
とか言われてしまいますし、テストの点数伸ばせている実感も湧かないことが多いです。
努力が成果に結びついている実感がないんです。
その結果、やはり
オレ向いてないや…
と感じる人が出てきます。
ということで、塾講師が辛いと思われやすい理由とは、
入社前のイメージと、入社後の仕事が乖離しているから!
ということになります。
【塾講師のミスマッチ例】
①授業頑張ろうと思ったら営業ばっかりだった
②生徒とのコミュニケーションが思ったよりうまくいかない
③1年目からある程度高い知識とスキルを要求される
④経験が浅いうちは努力が成果に結びつきにくい
ということで、「塾講師は本当に辛いのか?」の答え。
A.入社前から正しく認識しておけば、他の仕事と比較して特別辛いわけではない。
ブラック塾に勤めているから辛いのかも?
ブラック塾の特徴と回避する方法はこちら⇩の記事に書きました。
残業が多いのに残業代が出ないとか、休日がないとか、上司がパワハラ気味だとか…
このような場合は塾講師だから辛いわけではなく、ブラック企業に勤めているから辛いのでしょう。
そういう塾はいずれ淘汰されますので、タイミングを見てより条件の良い塾を探しましょう。
生徒のことを考えるとなかなかすぐに辞められないのがツライところですね。
どんな仕事が辛いのか
どんな仕事にも辛いことはあると思いますが、実際塾講師の辛いところはどんなところなのか。
塾業界でよく聞く話や私の経験談をお伝えします。
営業が辛い
一定の売り上げがないと利益が出ずに潰れてしまいますので、当然売り上げは必要です。
そして塾によっては売上ノルマが設定されるところもあります。
では、塾講師はどんな営業活動をするのか。
〇新規問い合わせ者に対する面談
〇入会数・売上数値管理
〇増コマ提案
〇保留案件に対する電話がけ
〇生徒への友人紹介声掛け
〇講習での過度な受講提案
〇保護者面談での紹介促進
〇校門前チラシ配布
塾によって社員講師が上記すべてを行うところもありますし、逆に講師は全く営業しないところもあります。
普通に新規面談したり売上管理するのは何も辛いことはないんです。
しかし、ノルマに追われて上司から圧をかけられると苦しい仕事になってしまいます。
講習取らないって言ってる家庭に片っ端から電話かけろ!
全然生徒増えてないな!すぐにポスティング行ってこい!
こういう塾も世の中には存在してしまうのです。
きちんとしたサービスを提供してご家庭に満足してもらえれば、自然と生徒が増えて売り上げも上がりますので、過度な営業は必要ないんですけどね。
深夜の帰宅や長時間拘束が辛い
塾の一番忙しい時間帯は夕方~夜です。
授業前には掃除や事務作業・授業準備などをして、夕方からフルで授業に入り授業後は生徒に補習したりすると、あっという間に23:00くらいになってしまいます。
そこから残った仕事を片付けたり教材研究したりすると、終電での帰宅になることも珍しくありません。
しかも1年目は研修のため、午後から出社が基本の塾業界でも、午前中から出社しなければならないことも多いです。
この深夜帰宅や長時間拘束が辛いと感じる講師は多いでしょう。
夜型の生活は独身だと気にならない人も多いんですが、家族がいる人だとすれ違いの原因になり得ます。
無理して家族に合わせようとして睡眠時間を削っている人もいるくらいです。
それで人によっては「この生活ツライわ」と感じるのです。
結果が出ないと辛い
いろんなタイプの生徒が塾に来るので、すぐに成績が上がる人もいれば、効果を実感できるまでに時間がかかってしまう人もいます。
頑張って指導しても点数上がらないのは辛いです。
また、生徒が受験に失敗してしまった時も辛いです。
時には涙が出るほど悔しい思いをすることもあります。
しかし、「講師も生徒も悔いのないように全力でやり切った」と思える場合は納得できますし、ご家庭から感謝されることもあります。
クレームが辛い
こちらに非がある場合には当然平謝りするだけなんですが、中には理不尽なクレームもあります。
テストの点全然上がらないじゃないか!
いやいや、まだ授業1回やっただけなんですけど…
ウチの子頑張ってるのに何で成績上がらないんだ?
いやいや、お子様宿題全然やらないんですよ…
普通のご家庭であればしっかりコミュニケーションをとって、
・できることとできないこと
・結果が出るまでにかかる時間
・現状の正確な分析と今後の対策
こういうことを伝えておけば滅多にクレームにはなりません。
私の15年以上の教室長経験においても理不尽だと感じたのは3件のみです。
しかし経験不足の社員講師や教室長はそのようなコミュニケーションが取れていないためもう少しクレームが多いかもしれません。
そうすると「クレーム辛いわ」と感じてしまいます。
授業準備が大変
学校と違って塾は生徒が先生を選べます。
だから一回でも「この先生分かりにくいな」って思われてしまうと致命傷になりかねません。
だから社員講師は毎授業全力投球です。
そうすると自然と準備にも力が入ります。
新人講師など慣れていないうちは、90分授業の準備に90分以上かかったりすることがあるのです。
退勤後に自宅で予習することもありますし、無人の教室で大きな声で授業の練習をすることもあります。
先輩・上司相手に模擬授業を行って厳しいダメ出しをされることもあります。
私はこれらの経験を通して授業が上手くなった実感があったのであんまり辛いと感じなかったんですが、中にはギブアップしてしまう人もいますね。
大学受験生の指導をするときには毎回赤本解いてから授業したりもします。
講習期間などは勤務時間中はフルで授業に入るので、どうしても勤務時間外に準備をすることが多くなってしまいます。
【塾講師社員の辛い仕事まとめ】
・営業とその圧力
・深夜の帰宅や長い拘束時間
・結果に表れにくいことがある
・クレーム対応
・授業準備
辞めるときはどうすべきか
ブラック塾に入社してしまった場合などは辛すぎて辞めることを考えることもあるでしょう。
そんなときにどうすべきかを書きます。
まずは労基署や弁護士に相談してみる
長時間拘束や休日出勤などが辛い場合は労働基準監督署や弁護士に相談してみるという手段があります。
労基署が違法性が高いと判断すれば、調査を行い是正勧告をすることができます。
ただ、改善のための法的な命令を下すことまではできないようですので、指導されても開き直ってしまうほどのブラック塾の場合には弁護士に相談するのもアリです。
これらの行動により労働環境が改善されれば、もう少し続けてみようと思えるかもしれません。
辞める時期を考える
どんなに辛くても、自分を信頼してついてきてくれた生徒を見捨てることはできませんよね。
そういう生徒に対する責任を果たそうとした場合、どのタイミングで辞めるのがベストでしょうか。
教室責任者の立場からすると、塾講師が退職するのにベストな時期は年度末です。
入試や学年末テストが終わってひと段落ついた頃ですので、講師の変更があっても大きな問題にはなりません。
数か月前から申し出ておいてもらって、年度区切りでの退職になるのが一番よい流れですね。
もちろん法律上は、2週間前に申し出れば退職できます。(期間を定めないで雇用されている正社員の場合)
しかしほとんどの塾では「2週間後に辞めます」と言われると、生徒・保護者に迷惑が掛かってしまうので、かなり困ると思います。
年度末が難しければ講習が終わった時期やテストが終わった時期で考えるといいかもしれません。
(心身がボロボロでそんなことまで考えられない場合はすぐに辞めるのもアリです。命の方が大切です。)
いずれにせよできるだけ早めに申し出るといいでしょう。
条件のよい塾(または他の仕事)を探す
塾講師の正社員が辛いのは、講師側の適性もあるんですが、労働環境に問題がある場合が多いと思っています。
実際私も前の塾では講習で10時間授業していてキツかったです。
しかし世の中色んな塾があります。
年間120日必ず休める塾や、講師が一切営業しない塾もあるんです。
そんな塾どこにあるの?探すの大変じゃない?
そのように感じる人は転職エージェントを活用してみましょう。
無料で登録するだけで非公開の好条件案件を紹介してもらえます。
転職で、サイトに掲載されていない【非公開求人】を活用する方法とは?
塾講師に疲れ果てた人は、自分の適性を活かした他の仕事を探すのにも役立ちます。
でも塾講師を初めてまだ1年未満で、受験生を送り出した経験がない人であれば、入試後まで耐えてみてもいいかもしれません。
笑顔いっぱいで「合格した!」と報告してくれる生徒たちをみると、すべての辛かったことが報われます。
そんな生徒たちを笑顔にできる素晴らしい仕事ですので、「塾講師辛くて辞めたいな」と思っている人は、新天地で新たな一歩を踏み出すという選択も考えてみてはいかがでしょうか。
まとめ
このページでは塾講師の辛いところについて解説しました。
どんな仕事でも辛い部分は少なからずあると思います。
しかしそれを知っているかどうかで対処法が変わってくるでしょう。
理解して乗り越えていくのか、他の道を進むのか。
みなさんのより良い人生の第一歩のきっかけになれば幸いです。