塾の教室長に興味あるんだけど、大変なのかな?
塾講師から教室長になるんだけど、自分にできるかな?
教室長の仕事辛すぎる…どうしたらいいんだろう?
これらの疑問や不安に対する答えを、現役塾長が解説します!
全国展開する個別指導塾で15年以上教室長をやってきて、辛いことも楽しいことも一通り経験してきましたので、ぜひ参考にしてください!
先に結論は書いておきます。
教室長の仕事内容
教室長の仕事は多岐にわたり、本当にいろんなことをやるのですが、ここでは重要度の高い順に書きます。
①集客
生徒がいないと教室長も講師も給料もらえませんね。
したがって「生徒に入会してもらう」というのは最も重要な教室長の仕事です。
そして集客と一言で言っても、やることは一つではありません。
1人の生徒が入会するまでの流れは下のとおりです。
HP・web広告・チラシ・紹介による認知
⇩
問い合わせ
⇩
面談
⇩
体験授業
⇩
入会手続き
この流れのすべてに教室長が関与していきます。
ホームページは本部が作っているので1から作る必要はないんですが、少なくとも月に1回くらいは更新します。
講習期間終わっているのに「講習生募集!」って載せておけないですからね。
この作業は、しっかりやりこむと1時間くらいかかることもありますが、ちょっといじるくらいなら10分コースですので、辛い仕事ではありません。
チラシに関してやることは、「何部のチラシをいつどの地域に折り込むか」を考えて、発注するくらいです。
この仕事を丁寧にやろうとすると、過去~現在の在籍生の住所を地図上にプロットし、最適な地域や部数を検討するところから始めますが、これは毎回やる必要はありません。
折り込みチラシだけでなく、塾によってはポスティングや校門前チラシ配布に行かなければならないかもしれません。
特に生徒数が少ないところや、上からの営業圧力が強い塾では必須のところが多いようです。
また、紹介による問い合わせが来ると、とても嬉しいものです。
自分たちのやっている指導が評価され、それを求めて来られるわけですからね。
実績を重ねていけば自然とそういった紹介での問い合わせが増えてくるんですが、
中には面談時に
ご近所に塾をお探しの方がいらっしゃったら是非ご紹介ください!
などと声掛けをしなければならない塾もあります。
問い合わせ対応はスピード感が大切です。
すぐに電話をかけ面談のアポをとったり、資料請求に対しては即日で資料を発送します。
一つひとつの仕事に時間はかかりませんが、抜け・モレのないように神経を使う仕事です。
入会面談は集客に関する仕事の中でも最も重要です。
どんなによい指導をしていても、面談でそれを伝えられず信頼を得られなければ入会に結びつきません。
では入会面談が大変な仕事かと言われると、そんなことはありません。
むしろ「自分の教室に興味をもってくれてありがたいなー」と思いながら面談します。
ただ、未経験の新人教室長からすればプレッシャーのかかる仕事であることは間違いありません。
入会面談についてより詳しくはこちら⇩に書きましたので参考にしてください。
体験授業を実施する場合、個別指導塾なら
・講師の選定
・日程・時間の決定
・日時・持ち物の伝達
この辺りを速やかに済ませます。
人気講師のA先生でやりたいけど、入会後はA先生担当できなそうだな…
こういうことを考えながら決めますが、大変な仕事ではありません。
体験後「入会します」という意思表示をしてもらえたら、ホッと一安心です。
入会手続きは事務的・機械的に進められますが、入会面談の話をもとに、今一度ニーズをよく確認しておきます。
言うまでもなく、入会はゴールでなくスタートであって、そこからの指導に満足してもらう必要がありますからね。
・ホームページ管理
・チラシ販促
・問い合わせ対応
・入会面談
②講師マネジメント
特に個別指導塾においては、教室長はあまり授業をしません。
講師がプレイヤーで教室長は監督です。
生徒の成績向上という成果をあげるには、講師一人ひとりがプレイヤーとして適切に判断して動けるようにしていかなければなりません。
そのように自分で考えて行動できる講師を育成し、管理するのが教室長の仕事です。
(講師マネジメントについて詳しくはこちら⇩に書きました。)
募集から契約はそんなに大変じゃないんですが、初期研修やその後しばらくはめちゃくちゃエネルギーを使います。
人によっては入社後半年くらいの間、
教室長が見本見せる→新人講師の模擬授業→フィードバックして本番
という流れを続ける必要があります。
授業計画や宿題の設定についても毎回チェックすると相当時間がとられます。
しかしそれだけ手間と時間をかけて育成すれば、その後は安定して貢献してくれるようになります。
そうなってからも、定期的に指導や労働環境についての不安・不満を吸い上げ、モチベーションを維持する必要もありますので、教室長には高いコミュニケーション能力が必要とされます。
一通り仕事をこなせるようになってからも、講師の教育は続ける必要があります。
具体的には、机間巡視をして講師の授業レベルをチェックします。
・一方通行の授業になっていないか
・宿題の設定やチェックが適切にされているか
・コミュニケーションが取れているか
・生徒が授業内容を理解しているか
問題がある場合には授業後に講師に直接指導します。
このように、講師の授業スキルの向上と安定のために、教室長は力を注ぎつつける必要があります。
・時間もエネルギーもかなり必要
・管理者として高いコミュニケーション能力が必要
③成績管理
この仕事もめちゃくちゃ重要です。
塾に通わせてるけど成績上がってないみたい…
このように保護者が感じた場合、退塾の可能性があるだけでなく、地域での評判が悪くなってしまいます。
そうするといくら集客に力をいれても生徒数が安定しません。
逆にきちんと成果を出して地域での評判も獲得したら、集客に力を入れなくても自然と生徒が増えていきます。
その段階まできたら、成績を上げるということに力を集中すればすべてがうまくいくといっても過言ではありません。
では具体的に成績を上げるためにどうするか。
【数値管理】
今何点で目標何点か。志望校合格のために何点必要か。
これを生徒・講師と共有します。
過去の定期テストや模試の成績をすべて記録したり、入試データから目標点を検討したりします。
講師の経験が長いと講師主導でもできるため教室長の負担は少ないですが、新人講師の場合には現状の数値や目標を把握せずに授業をしてしまうこともありますので、そこはしっかりエネルギーを使って指導します。
【理解度管理】
2次方程式ミスなく解けるようになった?
このような生徒への問いかけや講師からのヒアリング、確認テストの正答率などから理解度を把握します。
そして理解が滞っている場合、
・授業外で呼んで学習量を増やす
・補習する
・管理を徹底する
これらを通して理解度を上げていきます。
「どんな手段を使ってでも成績を上げる」という感覚ですね。
【結果分析】
テスト結果が出たり通知表が出たりしたら、目標に達しているかを確認します。
そして目標に達していないときには原因を分析します。
この原因分析は講師に任せてもいいんですが、教室長もその報告を受けて把握しておく必要があります。
そうしないとその後講師が改善できているかチェックできなくなりますからね。
・生徒の成績を上げることに全力を注がないと安定した運営は不可能
・講師に丸投げはダメ!ゼッタイ!
④定期保護者面談
多くの塾で年に3回~5回の保護者面談を行います。
保護者面談の役割は下記のとおりです。
前述の「成績管理」がうまくいっていれば、保護者面談で大変なことはありません。
おかげさまで成績も順調に上がっています!
このような話なら講習の提案も通りやすいですし、終始いい形で面談をすることができます。
しかし成績が上がっていないときにはクレーム気味の話になることもありますし、講習のコマ数を提案しても営業色が強くなってしまってうまくいきません。
またウチの教室の場合、生徒が100名ほど在籍している時なら3週間から1か月くらいの期間で60~80件ほどの面談を一人でこなすので、時間は結構取られます。
面談実施前には、
・成績関係帳票の出力
・講習提案カリキュラム作成
・講師からのヒアリング
これらの準備もしますので、残業必至です。
個人的には面談期間は講習期間よりも大変ですね。
⑤スケジュール管理
〇日の授業、他の日に移してもらえませんか?
このように個別指導塾では授業の振替を認めていることが多いと思います。
振替授業の日程を決め、講師・家庭に連絡するのが教室長の仕事です。
(講師が決めて連絡する塾もあると思います。)
また、大学生講師の場合には履修の都合で出勤可能な曜日や時間が変わることがありますので、それに合わせて授業を組みなおします。
そして一番大変なのが講習期間のコマ組みです。
これは生徒が申し込んだ分の授業を、講師・生徒が来られないところに注意しながら、組み上げていく作業です。
コマ数は絶対に間違えてはいけませんし、講師が来られないはずのところに授業を入れてしまったりすることも許されません。
最悪のケースでは「生徒が日程表をみて授業に来たけど、講師が来ていない」ということも起こり得ます。
まあ、そうならないように十分にチェックするんですけどね。
私の場合、100人分の日程表を作る場合には10~15時間ほどかかりますので、2~3時間の残業を1週間ほど続けて完成させる感じです。
知り合いの室長はコマ組みの時期には大体1~2回徹夜するそうです。
⑥労務管理
労働時間や有休の管理、給与計算などですね。
塾によっては経営陣からの「人件費下げろ!」等のプレッシャーがあるかもしれませんが、基本的には機械的にできるので辛い仕事ではありません。
言うまでもなく、給与計算でのミスがないように細心の注意を払いますが。
⑦教材管理
教材の在庫を管理したり発注したりします。
「どの教材を中心に指導するか」という教材の選定には少し時間をかけることはありますが、基本的に時間もかからず簡単な仕事です。
生徒によっては学校で使っている教科書傍用問題集を使って指導したほうがいい場合もありますので、それを塾で購入して授業準備をしていくこともあります。
市販されていない学校専売の教材だと、メルカリなどで入手することもあります。
⑧環境整備
塾は信用商売なので、地域での評判が売り上げに影響します。
教室の中だけでなく、外にも目を向けることが必要です。
たまに他の塾の前を通ったときに、多くの自転車がビシっと並んでいると、
この塾生徒集めてるんだろうな。
と感じますね。
生徒が集まる塾は、細かい点にも手を抜かないということです。
①集客
②講師マネジメント
③成績管理
④保護者面談
⑤スケジュール管理
⑥労務管理
⑦教材管理
⑧環境整備
激務だと言われる理由
この章では、教室長の仕事が激務だと言われやすい理由を書きます。
①会社に問題がある
会社から「生徒集めるために朝からポスティング行け!」って言われるんだよな。
その後終電まで教室業務だし…
このように教室長に生徒数が少ない責任を押し付け、残業代も払わずに長時間労働をさせるブラック塾もあるようです。
講習期間中は毎日午前中から深夜までの労働を強いるとか。
最近では塾業界でもコンプライアンスが重視されるようになってきましたので、残業代未払いなどの問題は滅多にないはずですけどね。
しかし法令や社会的ルールに則っていても良くない体質の会社もあります。
【研修・教育が十分でない会社】
教室長として全体の運営をしようとしたら、少なくとも1~2年の教室業務の経験が必要です。
大学4年間講師のアルバイト経験があるならまだしも、未経験・新卒で教室長にしてしまう塾があるのは驚きです。
十分なサポート体制があるならまだしも、そういう会社は運営は新人教室長に丸投げになりがちです。
成長しない
⇩
辛いまま
⇩
辞める人が多い
⇩
また採用してすぐ教室長
悪循環ですね。
十分な教育をせずにプレッシャーをかけてくる会社では、教室長が疲弊してしまいます。
【売上至上主義の会社】
売上・生徒数のことしか求めてこない会社も良くありません。
講習の売り上げノルマ達成のために、本来必要でない授業回数での受講を勧めたりするんです。
これはまともな感覚の持ち主なら大きなストレスです。
そういう体質の会社はチラシの校門前配布やポスティングも教室長がやるよう指示してきますので、激務になりがちです。
来てくれた生徒の成績を上げ、志望校に合格させることに力を注げば生徒増えるんですけどね。
【経費削減意識の強すぎる会社】
塾ではテスト対策や模試で日曜も教室を開けることが多いのです。
その時に、
室長固定残業代払ってるんだから日曜出てよ。
バイト入れたらその分人件費かかるし。
などと言う会社があります。
予定していた残業時間の範囲内であれば問題ないんですが、それを超えて働かせたり、そもそも固定残業代の基準となる時間が明確でなかったりする会社は注意が必要です。
掃除や雑務に関しては事務のアルバイト雇うだけで教室長の負担をかなり軽くできるんですが、雑用までやるのが教室長だと考えている会社もあります。
というわけで、教室長が激務になる理由その1は「会社に問題がある」でした。
・教育してくれない
・売上至上主義
・経費をケチってしまう
②教室長志望者の資質
初対面の人とコミュニケーションとるの苦手なんだよな。
勉強はそこそこ得意なんだけど…
こういう人はあまり教室長に向いていません。
講師とも生徒とも保護者とも、とにかく喋る仕事です。
何なら営業です。接客です。
それを理解せずにこの仕事を選んでしまうのは危険です。
数学苦手なのに数学受験するようなもんです。
それは辛いですよね。
保護者には堂々と(かつ丁寧に)話ができたほうがいいですし、講師には時には厳しい話をしなければなりません。
ルール違反をした生徒には毅然とした対応が必要です。
性格的にそういうのが苦手な人は、教室長をやっててしんどいと感じることが多いと思います。
とはいえ、苦手でも向上するスキルです。
成長していこうと前向きに考えられるタイプであれば問題ありません。
それからマルチタスクが苦手な人も向いていないかもしれません。前述のとおり色んな仕事がありますので、効率よく抜けやモレなくこなせないと長時間労働になってしまうかもしれません。
また、上からの営業プレッシャーや生徒管理などストレスを感じる場面が多いですので、うまくストレスをコントロールできないと辛いですね。
・コミュニケーションが苦手
・マルチタスクが苦手
・ストレスに弱い
というわけで、教室長が激務になる理由まとめ!
①会社に問題がある
②資質に問題がある
激務を改善・回避する方法
もしあなたがすでに教室長で激務だと感じているなら、仕事のやり方・考え方を改善しましょう。
雑務に追われているなら、事務のバイトを雇って任せちゃいましょう。
時間のある講師に事務給でやってもらうのもアリです。
経営陣には「その方が結果的に生産性が上がり、売り上げ・利益が増大する」と言えばいいです。
それでも人件費が問題になるなら、優先度の低い仕事をカットしましょう。
よく考えたら「この仕事いらなくね?」と思う仕事があるはずです。
そして生徒の成績を上げることに注力すれば、営業の電話もポスティングも校門前配布もすべて減らすことができます。
(私はこれらの仕事を一切やっていません。)
ある程度の生徒を集めて軌道に乗せてしまえば、後は学習指導だけ頑張ればいいんです。
保護者面談もいい話だけできるので、苦になりません。
仕事のやり方を変えて、楽をするのです。罪悪感を感じる必要はありません。結果的に生徒・保護者の満足度が向上しますから。
マルチタスク処理能力、コミュ力もストレス耐性もないという人は考え方を変えましょう。
これらは後天的に身につけられるスキルです。
身につけるためにどう動いていけばいいかを日常から考えるのです。
「変えよう」と思わなければ変わりません。
その意識をもって仕事をこなしていけば、激務だと感じていたことが余裕でクリアできるようになります。
実際私も1~2年は「面談期間大変だな~」と思っていましたが、今はそう感じません。
考え方を変えて成長するのです。そうすれば今まで激務だった仕事に、気力も体力も余裕をもって取り組むことができます。
でも無理は禁物です。ホント向いてないなと感じたり、自分の会社が明らかにブラック企業だと判断できるなら、転職するのも一つの手です。
もしあなたがこれから教室長をやろうと思っている人なら、仕事内容をよく理解しておきましょう。
教室長は授業する人ではありません。
これを入社前に知っているかどうかで辛さの感じ方が大きく変わります。
まとめ
教室長の仕事内容や、激務かどうかについてできるだけ詳しく解説しました。
適性や経験の浅さによって激務と感じることもあるが、それは改善することが可能だということがお分かりいただけたと思います。
塾の教室長であっても、適切な働き方と正しい会社選びによってワーク・ライフ・バランスを必ず実現できるのです。
これからやってみようと考えている方や辛くて辞めたいと思っている方。
教室長は自分の頑張りがダイレクトに生徒・家庭からの評価につながる、非常にやりがいのある仕事です。
そして、生徒の成長や合格によって本当に多くの喜びや感動を得られる仕事です。
「激務でツライだけではないのですよ」と伝えたくてこの記事を書きました。
教室長=激務みたいな風潮に対してモノ申したくて長くなってしまいましたが、ここまでお読みいただいてありがとうございました!
1人でも多くの教室長に幸せになってもらえるきっかけになれたら嬉しいです。